art and culture

RECENT WORK

BOOK CONSERVATION AND RESTORATION “Supernatural Illusions”

書籍修復の補足4

書籍の保存を世代、世紀の長い単位で考えた時、中性または弱アルカリ性の上質紙で丁寧に作られた、本にジャストフィットする保存箱は、想像以上の威力を発揮する。保存箱の重要性を知ってもらいたい。本の箱には、背が見えるスリップケースと、本全面を覆う箱がある。欧州各国の美術製本コンクールでは、運搬時の本の保護のため、出展作品に保存箱の制作が義務付けられていることが多い。スリップケースと箱には美的側面もあり、審査対象となるコンクールもある。その場合は、芸術作品と呼べる、デザイン性に富んだ独創的な美しい箱作品が並ぶ。そういう「コレクターの世界の常識」を知らない人は、どうせ捨てる箱にお金をかけるのはばかばかしい、と言う。製本を知らない人だとすぐに分かるが、黙っている。過去に一度だけ「スリップケースも保護にはなるが、書棚に置くと背だけ日焼けして外見を損う、だから貴重本には外箱も必要だ」と言った訪問者がいた。とても頭の良い人だと思った。

DSC00522

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

Advertisements

RECENT WORK

BOOK CONSERVATION AND RESTORATION “Supernatural Illusions”

書籍修復の補足3

機能面と美的側面の両機能を果たす小口装飾には、天金、天銀、天マーブル、更に全三方の小口に金銀箔加工、刻印装飾、マーブル加工、顔料着色、模様や風景を描いたりした豪華なものもある。三方小口マーブルは昔、文書偽造防止のために帳簿に多く使用されたそうだ。色小口では、数世紀前の書籍を見るとほぼ例外なく、フランス装丁本は赤い小口、イタリア装丁本は青い小口だ。ある日本の修復家が、赤小口を見るとフランスの香りを感じ、青小口を見るとイタリアの空気を感じると仰り、その通りで面白いと思った。フランスの赤小口は、額縁などの金箔装飾の下地にも使われるアルメニア土の赤色で、虫除け効果があると教えてもらった。考えてみれば、箔装飾でアルメニア土の下に石膏を何層か塗るが(チェンニーノ・チェンニーニは8層と書いている)、硫黄を含有する石膏もまた虫除けになる。昔の人の知恵には驚く。アルメニア土には、黄、赤、黒、緑、青があるので、イタリアの青小口はアルメニア土の青なのかも知れない。「フランスの赤、イタリアの青」の背景について、今後の研究課題だ。

testaau2trelati1trelati2

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

CREATION PHILOSOPHY

材料のこだわり

美術製本とインテリアオブジェ制作という今の仕事を始める前、修復だけをしていた十数年前まで、私にとって紙は、和紙も洋紙も、文房具店か画材店で購入するものだった。紙職人から直接購入することを考えたことはなかった。それが、修復よりも作家の個性が問われる、より創造的な職に携わるようになり、作品に使う材料一つ一つの選択の重要性を学んだ。多様な材料の生産者を時間をかけて調べ、今も常に開拓している。その知識と人脈も、貴重な財産だ。紙は製紙会社、革は革会社、木箱は木箱職人、真鍮金具はブロンズ職人、プリント紙は印刷職人に相談し、厳選する。選択の決め手は、第一に質(それがなければ話にならない)、そして、どこで誰から購入するのかも、重要な鍵になる。他より高くても、より上質のものを迷わず選ぶ。丁寧な良い仕事が光る人、基本精神に共感を持てる誠実な人たちが作った上質材料を使いたい。そういう意気込みと誠意は、自然と作品に表れ、分かる人には必ず伝わると思うからだ。

agk3

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

JAPANESE PAPER

和紙の話
私の最近の関心事は「埼玉県小川町の細川紙について」だ。3年前、島根の石州半紙、岐阜の本美濃紙、埼玉の細川紙がユネスコ無形文化遺産に指定されたという話を、友人から聞いて知ったのが、そもそもの始まり。和紙は、清らかな水が流れ、原料となる楮などを栽培できる自然豊かな所でないと作れない、ということだけは漠然と知っていたので、関東地方に和紙の産地があるなんて!と驚いて以来、細川紙のことがいつも頭の中にある。教えてくれた友人は浦和在住で、地元では昔から、和紙の手漉き体験は小学校の社会科見学のお決まりで、県民なら知らない人はいない伝統芸術とのこと。私は東京出身だが、故郷東京のことをどれだけ知っているだろうか。灯台下暗しのことばかりだ。(画像は欧州の製紙会社が生産している修復用和紙、左2枚は手染めした革)

nnc72

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

LIBRO OTTAVO 2

8ツ折りフォリオ2

「8ツ折りフォリオで袋とじ状態の本を作れるか」という質問に話を戻すと、答えは「できます」。伝統製本の規則に従えば、袋とじ(仮状態)にハードカバー(保存版)をつけるのは矛盾している。しかし、少し工夫すれば、最終的に機能と外見を損うことなく、そのような意表をついた面白い本を作ることは十分に可能だ。天方だけは、埃除け(機能的側面)と見た時の美しさ(美的側面)のために、スッパリ切り揃えた状態にする必要があり、その条件を満たせばよい。近々、試作品を作ろうと思っている。おそらく価値が分かるのは一握りの人だけで、製本と出版の歴史を知らない大部分のイタリア人には「1頁ずつペーパーナイフを入れないと使えないノートなんて面倒だ」と言われるに違いないが、良しとしよう。無難に万人受けする簡単なことより、ごく一握りの人の心に強く響く仕事をしたい。

brm16brm32brm33brm34

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

LIBRO OTTAVO 1

8ツ折りフォリオ1

「8ツ折りフォリオで袋とじ状態の本を作れるか」と聞かれたことがある。製本を専門としないのに、ここまで知識の豊かな人が世の中にはいるものかと、高度な質問に驚いた。「8ツ折りフォリオの袋とじ」とは写真のような状態のことを言う。ヨーロッパの本は何世紀も前から、こうして大判の紙両面に頁組みした本文を印刷し、それを正しい順番に折って、重ねて、ばらばらの状態か、糸で1ヵ所留めてあるか、ソフトカバーがついて、仮の状態で販売された。仮の状態でペーパーナイフを入れながら読み進み、初回の読書後、製本職人に持参し、永久保存版としてハードカバーに装丁した。装丁は、持ち主の好みや予算に応じて、多様なスタイルとマテリアルの中から選択する。つまり、洋服や靴のオーダーメイドと同じ仕組みだ。しかし、製本の方が歴史はずっと古いので、オーダーメイドでは本が「本家」である。

brm17brm24brm25brm26

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

RECENT WORK

BOOK CONSERVATION AND RESTORATION “Divina Commedia”

書籍修復-ダンテ・アリギエーリ『神曲』補足3

依頼者はおそらく戦後生まれの方なので、彼の両親か祖父母から譲り受けた本と思われる。本を手に取って頁を繰る時の慎重さから、誰かの形見でとても大切にしていることが、言われなくても伝わる。この本が持ち込まれた日、日本からの取材中で、記者が「何故修復したいのか」と尋ねると、「私達の、私の、歴史そして文化だから。大切に後世に残したいから。」という回答だった。依頼者共通の思いを端的に表現している。古くなったら捨てて新品に買い替えるのではなく、例えお金をかけても、自分の分身として人生の思い出と共に、それを共有する親族に託すために、まず読んで、使って、壊れたら修繕して、また末永く使う。世代が変わっても、そのサイクルが続くようにする。その連続が歴史になる。物を大切にする心は、歴史や文化を、そして周囲の人のことを大切にする心にもつながる気がする。

brm2

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

PLASTIC MODELS AND BOARD GAMES

レオナルドのプラモデル2

彼の店マジック・ハンマーの名刺に「ボードゲーム・カフェ」とある。BOARD GAMEという言葉には魅力的な響きがある。卓上ゲームですぐに思い浮かぶのはチェスとバックギャモン。バックギャモンの発祥はメソポタミアまで遡り、5600年以上の歴史のある世界最古の卓上ゲームであり、ロマンスが絵巻のように脳裏に展開されるのは私だけだろうか。こういう店では、土曜日の午後、高校生たち(男の子が多いが時々女の子も見かける)が分厚いスーツケースのような黒い鞄を携えて集まってくる。中に何が入っているのかとても気になっていた。観察すると、鞄の中はクッションで仕切られ、各自プラモデルを取り出して台に設置し、ゲームに興じている。夕食時が近くなると、自分のプラモデルを皆大切そうに鞄にしまい帰っていく。家に閉じこもってスマホにかじりついている若者(大人も)が多い現代、コレクター仲間が毎週集まって楽しむ姿は、人間らしい健全な趣味という感じがして、ほっとする。

DSC07480

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

ARTISTIC INSPIRATION

Plastic model creation and collection.

“MAGIC HAMMER” shop and board game bar café: Via di Scandicci 93-99, Scandicci (FI).

www.magichammer.it

レオナルドのプラモデル1

プラモデルと言えば男の子の遊びというイメージがあり、今まで無縁だった。奥が深いことは想像に難くない。収集する物は様々だが、熱心なコレクターに男性が圧倒的に多いのは、幼少期から模型などに触れる機会が多いからかも知れない。先日、レオナルドのゲーム専門店を訪れた。彼がガンダムの話を始めると熱が入り、止まらない。ガンダムは言わずと知れて日本のアニメだが、私にとっては未知の世界。知らない登場人物名にきょとんとしてしまう。店内でスタッフが販売用ミニチュア・プラモデルを制作していた。作業台に所狭しと並ぶ道具と絵具の数々を観察するだけでわくわくする。道具好きの私にはとても魅力的な風景だ。世界中の少年から大人まで、プラモデルに夢中になる気持ちが分かる。

DSC07477DSC07479DSC07480DSC07481

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it

ARTISTIC INSPIRATION

Excellent craftsmanship. Master of bespoke furniture Luigi D’Orio.

“BOTTEGA DI GINO”: Via dei Cardatori 22R, San Frediano, Florence, Italy.

ジーノの特注家具

通称ジーノの本当の名前はルイージだが、知っているサン・フレディアーノ住民はあまりいないらしい。私たちのアトリエの真裏に工房を構える家具職人。アトリエの窓を開けて作業していると、ジーノと地元住民の世間話が聞こえる。アトリエのウィンドウとエントランス、そして家具の一部は、アトリエ創業時に、私とパートナーの長年の貯金を投資してジーノに特注で制作してもらい、自分たちでアトリエのシンボルカラーであるアマラント色に丹精込めて塗装した。イタリア家屋特有の日さし窓ペルシアーナpersianaを今も完全手作業で作れるフィレンツェでは数少ない家具職人だ。

DSC07529DSC07530DSC07531DSC07536DSC07532DSC07534

ATELIERGK FIRENZE

https://www.instagram.com/ateliergk_firenze/

https://www.facebook.com/ateliergkfirenze/

http://www.ateliergk.it