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BOOK CONSERVATION AND RESTORATION “Supernatural Illusions”

書籍修復の補足4

書籍の保存を世代、世紀の長い単位で考えた時、中性または弱アルカリ性の上質紙で丁寧に作られた、本にジャストフィットする保存箱は、想像以上の威力を発揮する。保存箱の重要性を知ってもらいたい。本の箱には、背が見えるスリップケースと、本全面を覆う箱がある。欧州各国の美術製本コンクールでは、運搬時の本の保護のため、出展作品に保存箱の制作が義務付けられていることが多い。スリップケースと箱には美的側面もあり、審査対象となるコンクールもある。その場合は、芸術作品と呼べる、デザイン性に富んだ独創的な美しい箱作品が並ぶ。そういう「コレクターの世界の常識」を知らない人は、どうせ捨てる箱にお金をかけるのはばかばかしい、と言う。製本を知らない人だとすぐに分かるが、黙っている。過去に一度だけ「スリップケースも保護にはなるが、書棚に置くと背だけ日焼けして外見を損う、だから貴重本には外箱も必要だ」と言った訪問者がいた。とても頭の良い人だと思った。

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BOOK CONSERVATION AND RESTORATION “Supernatural Illusions”

書籍修復の補足3

機能面と美的側面の両機能を果たす小口装飾には、天金、天銀、天マーブル、更に全三方の小口に金銀箔加工、刻印装飾、マーブル加工、顔料着色、模様や風景を描いたりした豪華なものもある。三方小口マーブルは昔、文書偽造防止のために帳簿に多く使用されたそうだ。色小口では、数世紀前の書籍を見るとほぼ例外なく、フランス装丁本は赤い小口、イタリア装丁本は青い小口だ。ある日本の修復家が、赤小口を見るとフランスの香りを感じ、青小口を見るとイタリアの空気を感じると仰り、その通りで面白いと思った。フランスの赤小口は、額縁などの金箔装飾の下地にも使われるアルメニア土の赤色で、虫除け効果があると教えてもらった。考えてみれば、箔装飾でアルメニア土の下に石膏を何層か塗るが(チェンニーノ・チェンニーニは8層と書いている)、硫黄を含有する石膏もまた虫除けになる。昔の人の知恵には驚く。アルメニア土には、黄、赤、黒、緑、青があるので、イタリアの青小口はアルメニア土の青なのかも知れない。「フランスの赤、イタリアの青」の背景について、今後の研究課題だ。

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書籍修復の補足2

伝統製本では、手漉き紙に印刷されたり、一枚ずつ手作業で上質紙を割いて手縫いした本の頁の端(小口こぐち)を切れば切る程、本の価値が下がる。手縫い本の美しさも半減する。よって修復でも、依頼者から指示がない限り、不揃いの小口を元の状態で残すのが基本だ。頁の端が破けていたり傷んでいる場合は、透き通る程薄い和紙で丁寧に補強し、頁からはみ出した和紙の繊維だけを除去する。細心の注意を要し、神経を消耗する作業だ。しかし三方の小口のうち、本の頭(天小口)だけはスッパリ切り揃える、というルールがある。理由は、埃除けという機能面と、見た時に美しいという美的側面がある。天小口が不揃いだと、本はいずれ画像のような悲惨な状態になる。166年間の埃でこの状態、数世紀になると更に悲惨なことになる。大切な本は、正しい製本が行われるように、また、その後の管理にも注意したい。

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BOOK CONSERVATION AND RESTORATION “Supernatural Illusions”

書籍修復の補足1

この修復では、表紙、見返し、頁の破損箇所を治し、手縫いし直すことに加えて、依頼主から、①黄色い見返しを修復して残す(白見返しの場合は予算の都合で新しい紙に替えることが多い)、②過去の持ち主が見返しに鉛筆で書き残したメモを完全に残す、③天小口が不揃いのために166年分の埃が溜まり真っ黒になっているので綺麗にする、という要望があった。著者や著名人の署名等は、歴史的且つ経済的価値を大きく左右するため、完全な状態で残すことは当然だが、無名の人のメモ(この本では購入品の金額計算)を残すか否かは、依頼者の好みに依る。文字に決して触れずに、入念に紙の洗浄、脱酸、修復するという作業は、単純なようで実際はとても神経を消耗し、骨が折れる作業だ。

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CREATION PHILOSOPHY

材料のこだわり

美術製本とインテリアオブジェ制作という今の仕事を始める前、修復だけをしていた十数年前まで、私にとって紙は、和紙も洋紙も、文房具店か画材店で購入するものだった。紙職人から直接購入することを考えたことはなかった。それが、修復よりも作家の個性が問われる、より創造的な職に携わるようになり、作品に使う材料一つ一つの選択の重要性を学んだ。多様な材料の生産者を時間をかけて調べ、今も常に開拓している。その知識と人脈も、貴重な財産だ。紙は製紙会社、革は革会社、木箱は木箱職人、真鍮金具はブロンズ職人、プリント紙は印刷職人に相談し、厳選する。選択の決め手は、第一に質(それがなければ話にならない)、そして、どこで誰から購入するのかも、重要な鍵になる。他より高くても、より上質のものを迷わず選ぶ。丁寧な良い仕事が光る人、基本精神に共感を持てる誠実な人たちが作った上質材料を使いたい。そういう意気込みと誠意は、自然と作品に表れ、分かる人には必ず伝わると思うからだ。

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